『数理的思考力』を養うために10才までに必ず手に入れたい力とは?

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突然ですが、算数の本当の面白さとは「計算が早い」ということではないですよね。もちろん、計算は早く正確な方が良いですが、一番楽しくて飽きないのは「思考力の問題」ではないでしょうか。だれだって、小さい頃にパズルやぬり絵、ブロックなどに夢中になった経験があると思います。

学校教育において思考力問題は小学校5年生くらいから増えてきて、中学・高校の数学はほぼ思考力の問題に変わっていきます。昨今の入試問題では「思考力・判断力・表現力」が重要視されるほどですので、思考力をしっかり身につけて中学校に入学し、3年後の入試本番に臨みたいところですね。

今回は大人になってからも必要となる「思考力」の正体について触れていきたいと思います。

目次

10才 発達段階として大きく変化する時期

脳の構造的に、10才までに脳機能の基礎的発達は一段落し、そこから先は10才までに獲得した能力を生かし、新しい能力を伸ばしていく時期に入ります。『算数脳』や『数学脳』といった力の元である「数理的思考力」はこの時期に確立されていきます。

数理的思考力とは

数理的思考力とは以下の2つで構成されます。

①数学的な能力

算数や数学を学ぶ際に、「立体を頭の中に描いて自由自在に操作する能力」、「数字の性質を見抜いて規則を発見する能力」などになります。問題を解く方策の習熟・成長のみでは対応できないセンスが必要とされる分野です。算数や数学が得意な子どもは基本的にこれらの力を持っています。

②意欲の問題

「考えることが好き」という気持ちが何より大切です。考えることが好きと心から思える子どもは、自ら日常生活や学校で出会う問題に対して意欲的に取り組みます。大人になってもたくましい数理的思考力をもっている人たちは、みんな「考えることを心から楽しむ」という点で共通しています。

具体的に数理的思考力を必要とする問題とは?

まず、具体的に数理的思考力を必要とする問題とはどういった問題なのか一度確認してみましょう。箇条書きで並べると、以下の6点になります。

① 立体の裏側や回転した形、切断した面などを想像する問題

② 図形の中に補助線を書き込み、解決する問題

③ 複雑な論理の問題

④ アイデアが浮かばないと解けない、発想力・発見力を問う問題

⑤ グッと踏み込んだ集中力を持続しないと解けない問題

⑥ 「証明」など、答えに至るまでの考え方を説明する問題

上述の「数学的思考力」とはまた別に、様々な種類の能力が関係していそうですね。では、その能力を細分化して見ていきましょう。

可視化する力

図形センス 見えないものが見える力

図形問題において、そこには書かれていない補助線がパッと浮かんだり、複数あるうち必要な線だけが選択的に見える力のことです。図形センスがある子は、答えを導くために見えなくてはいけない図形と補助線が浮きだって見ることが可能です。

空間認識力 頭の中で自在に立体を動かせる力

紙の上に描かれた図形を、頭の中で自由自在にクルクル動かしたり、手で触れられるようなリアルな3D映像として思い浮かべ、操ることができる力のことです。体を使って思いっきり外遊びをした子ほど身につくと言われています。

試行錯誤力 手を動かしてあれこれ試す力

戸惑ったらとにかく手を動かし、図形や絵を描くことで具体的なイメージから問題を解決しようとする力のことです。図や絵を描いてみたり、数字を代入してみたり、表にしてみたりなど、「手を動かしながら」考えることがポイントになります。特に中学校の数学の問題を解く上ではこの力は必要不可欠です!

発見力 「!」と思いつくことができる力

いままで習ったことや、知っていることに囚われない、独創的な考えを生み出す力のことです。この力のある子は複雑な図形問題などに向かい合った際も、既成の枠を外して考えることができ、柔軟な発想で答えを見つけることができます。模範解答とは違った道を辿ることができ、人とは違う感性を持っていることが多いです。

つきつめる力

論理性 筋の通った論理的な思考ができる力

解答までのアプローチを順序よく、理詰めで考えることができる力のことです。文書題や国語の長文問題では、論理的破綻がないように考え、解答する力が必要となってきます。論理性を鍛えるには、日ごろからの家族で交わされる会話も重要です。

要約力 なにが書いてあるか捉える力

問題文のポイントを見抜き、問われている内容を一文に煎じ詰めてしまう力のことです。問題というのは、要約するとすべて出題者との対話です。「結局のところ、出題者や作者の言いたいことは何か?」という視点を持つことがポイントになります。国語の文章問題などでは、文章の最後の段落付近に書かれていることが多いです。

精読力 一字一字じっくり読める力

とくに文章題においては、文中に隠されている「問題を解くヒント」を読み落とさない力が必要です。この力がないと、漠然と文章を読むことにより、重要な情報や大切な言葉を読み落としてしまうため、長文問題や文章問題が不得意になりかねません。

意志力 自分で解くことにこだわる力

問題を解くために粘り強く、最後まであきらめない、やる気の炎を消さずにやり通す力のことです。「執念」「しつこさ」「こだわり」とも言い換えられます。意志力のある子は生きぬく力も強くなります。

数理的思考力を養うためには?

仮説思考力(試行錯誤力)を高める

多様な問題を解くために必要な能力は、論理的思考力に加えて仮説思考力です。特に算数においては、ある程度の論理的思考力が身についたら、あとはどれだけ高いレベルの仮説思考力を身につけられるかがカギとなります。問題を「以前に習った解法」を思い出して解くことも大切ですが、『あーでもない、こーでもない』と仮説と検証をくり返し、自分で答えを導く能力(仮説思考力)こそが、伸びる子供を育てます。また、仮説思考力を鍛えた子供は、集中力や粘り強さも格段に高くなる傾向があります。最近では、すぐに答えに辿り着けるものがたくさん普及しています。しかし、すぐに答えを求めるのではなく、自分なりの考えで答えを導き、間違っていたら「なぜそれが不正解なのか」を考えることが欠けている子どもたちがとても多いように感じられます。

空間認識力を高めるトレーニング

算数やその他の教科の学習で、具体的なことを理解し、思考するためには、まずそれをイメージできるかが重要になってきます。このイメージ化の基本となる空間認識力(空間把握力)は以下の3つの力をバランスよくトレーニングすることで高まっていきます。

① 平面感覚(平行・対称・回転)

② 立体感覚

③ 図形を分解・移動・合成する能力

結果として、算数や数学の図形問題のみに関わらず、文章題までも頭の中で解けるようになります。さらに、算数や数学以外の教科にも通じる高い理解力と思考力がみ身についていきます。

具体的なトレーニング方法はまた別の記事で説明することにします。

『10才まで』と『10才から』で大切なこと

10才までに育てたい力

それは、数理的なセンスを育てる質のよい問題を、心から楽しみながら解くことです。そしてそのような問題を解くことを通じて、考え抜いた末に「あっ、わかった!」というひらめきを得ることです。大人は時間効率などを考え、ついつい子どもに答えを教えてしまいがちですが、それは子どもに「わからなかったら教えてもらえる」という考え方を植え付けてしまい、逆効果になってしまいます。自分で出来たことの喜びと、小さな成功体験の積み重ねがとても重要になります。

また、そういった喜びを感じる体験が、その後一生にわたって続く逞しい思考力を支えていくことになります。そして、その能力が一番伸びるのは「生活と遊びの中」なのです。五感を生き生きと使う遊びに夢中になることは、思考力を逞しく育てる上でこの上なく重要なことです。

10才から育てたい力

10才までに発達するのは、あくまでも数理的思考力を身に付けるためのセンスにすぎません。問題解決能力へつなげ、最大限の力を発揮させる力は10才以降に育ちます。例えば「抽象的な概念を扱うこと」や「出題者の意図を読み取ること」などです。また、学習の振り返りやノートの取り方などが身につくのは高学年からになります。そのためには、多種多様な成功体験と、それに伴う意識改革が必要になってくるでしょう。

親と子どもが一緒になって考える

子どもができたことには、「がんばったね♪」と褒めてあげましょう。そして、子供が苦戦して諦めそうになっていたり、助けを求めてきた場合は、問題の答えではなく解くためのアドバイスをしてあげましょう。子供が「考えることが好きになる」かどうかは、保護者の言葉にかかっています。「何で分からないの!」と責め立てたり、「〇〇のほうがよくできるわね」と比較してしまうと、考えることへの苦手意識を植え付けてしまいます。

また、大人が「考えること」を心から楽しんでいる様子を見せることは、お子様の考える姿勢を育むためのよい刺激になります。やる気を持って伸び伸びと問題に向かい、考えることを楽しんでいることを見守るスタンスが一番大事なことなのではないでしょうか。

最後に

今回の内容はいかがでしたでしょうか。

今回は「10才までに手に入れたい『算数脳』を鍛えるための『数理的思考力』」についてお話させていただきました。算数や数学を得意になっていくためには、幼い頃から様々な問題に取り組み、そしてそれを楽しんで実践していくことが大切だということですね♪

また、上述しましたように、仮説思考力や空間認識力を高めるためのトレーニング方法につきましては、また別の記事で書かせていただきたいと思います。

それではまた別の記事でお会いしましょう!

最後までお付き合いいただきありがとうございました(^^♪

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